「紀州釣り」という言葉、聞いたことはありますか?別名「団子釣り」とも呼ばれる、和歌山県(紀州)発祥の伝統釣法です。ヌカや押し麦を混ぜたヌカ団子で針付きエサを包み、それを海底にコトンと送り込む——団子が水中で割れた瞬間、ふわっと広がるエサに底のチヌが食らいつく、そんな独特のドラマがある釣りです。
ミケ丸は釣り歴20年ですが、最初に出会ったチヌ釣りはこの紀州釣りでした。父親に連れられて和歌山の堤防で団子を握ったあの日から、もう何十年。瀬戸内に移ってからはかぶせ釣りやフカセ釣りも覚えましたが、団子のドスンと底に届く感触は今でも忘れられません。今回は紀州釣りの基本から、瀬戸内で実際に通用するコツまでまとめてお話しします。
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紀州釣り(団子釣り)とは?和歌山生まれの伝統釣法
紀州釣りは、和歌山県の海岸地帯で生まれた団子を使ったチヌ釣りです。歴史は古く、地元では江戸期から派生したとも言われています。米ぬかをベースに押し麦・サナギ粉・砂などを混ぜた団子を素手で握り、その中にオキアミやサナギを刺した針を埋め込む——この一連の動作が紀州釣りの最大の特徴です。
団子は投入時の衝撃で割れず、海底に着底してから30秒〜数分かけてゆっくり崩れていきます。崩れた団子からはヌカや麦が雲のように広がり、それを目印にチヌが寄ってくる。集まった魚の真ん中に、針付きのエサがちょうど露出する——この絶妙なタイミングが紀州釣りの神髄です。
かぶせ釣りとの違い
瀬戸内のチヌ釣り師にはかぶせ釣りのファンも多いので、違いを整理しておきます。
| 比較項目 | かぶせ釣り | 紀州釣り(団子釣り) |
|---|---|---|
| 発祥 | 広島県・瀬戸内 | 和歌山県・紀州 |
| エサ | 殻付きカキ | 団子+オキアミ・サナギなど |
| 狙う層 | 中層〜底層(壁際) | 底層(着底) |
| 投入距離 | 堤防の壁際にスッと落とす | 10〜20m先まで投げる |
| 仕掛け | オモリなしのシンプル仕掛け | 磯ウキ+ハリス |
| 竿の長さ | 2〜2.4m短竿 | 4.5〜5.3m磯竿 |
| 魅力 | 壁際の50cm超大物が狙える | 寄せながら釣る粘りの面白さ |
どちらが釣れるかは時期と場所次第。かぶせ釣りはピンポイント勝負、紀州釣りは寄せて釣る粘りの釣りです。両方できると一日中チヌと遊べる引き出しが増えます。
紀州釣りで狙える魚種
- クロダイ(チヌ):本命中の本命。底層に潜む大型が狙える。瀬戸内では40〜50cmクラスが主役
- キビレ:チヌに似た銀色の魚。河口の汽水域で混じることが多い
- ヘダイ:本命級の引きを楽しめるゲスト。紀州釣りでは比較的よく出る
- アイゴ:背びれに毒がある外道。釣れたら必ず軍手で扱うこと
- ボラ:団子のヌカに釣られて寄ってくる定番ゲスト。掛かるとなかなかの引き

紀州釣りに必要なタックル
竿(磯竿1〜1.5号・4.5〜5.3m)
団子を10〜20m先まで投げ込むので、ある程度の長さが必要です。磯竿1号〜1.5号の4.5〜5.3mが標準。1号は感度重視、1.5号は重い団子でも安心して投げられるパワー型です。これから始めるなら1.2号あたりの汎用機が扱いやすいでしょう。
リール(レバーブレーキ付き2500〜3000番)
大型チヌが掛かったときに瞬時にラインを送り出せるレバーブレーキリールが理想です。普通のスピニングリールでも釣れますが、チヌ独特の突っ込みに対応するならレバーブレーキの恩恵は大きい。番手は2500〜3000番が一般的です。
ライン・ハリス・針
- 道糸:ナイロン2.5〜3号(視認性のあるイエローやオレンジ)
- ハリス:フロロカーボン1.5〜2号(1.5〜2m)
- 針:チヌ針1〜3号(市販の紀州釣り用フックでもOK)
- ウキ:紀州釣り用磯ウキ または 円錐ウキ(団子の重さに合うもの)
道具にこだわり始めるとキリがありませんが、入門段階では既製品の「紀州釣りセット」を使えば十分。チヌ釣りメーカーから入門用セットが出ています。タックルの詳細は別記事「紀州釣りタックル編」でじっくり解説する予定です。
団子の中身——基本配合の概要
紀州釣りの命は団子です。配合の自由度が高く、これだけで一冊の本が書けるほど奥深い世界。基本となる材料だけ紹介しておきます。
- ヌカ(米ぬか):団子のベース。安価でどこでも入手可能
- 押し麦:底に長く残って集魚を続ける重要素材
- サナギ粉:強い香りでチヌを呼ぶ
- 砂:団子の比重を上げて投入時の崩れを防ぐ
- アミエビ:集魚力アップ。寒い時期の起爆剤
- 海水:固さ調整に使う(水道水よりよく締まる)
配合の正解は釣り場ごと、季節ごとに変わります。「今日のチヌは何を食べたいか」を考えながら自分の団子を作るのが、紀州釣りの一番楽しいところ。詳しい配合と握り方は「紀州釣りの団子の作り方編」で順次まとめていきます。
紀州釣りの基本的な流れ
①ウキ下を調整する(最重要)
釣り座についたら、まず水深を測ってウキ下を「ベタ底」にあわせます。団子は海底で割れてエサが露出する仕組みなので、ハリスが底に這うか這わないかのギリギリが基本です。水深が10mなら、ウキ下も10m前後。最初の30分はこの調整に集中してください。
②針にエサを刺し、団子で包む
針にオキアミやサナギを刺したら、握りこんだ団子の中央に針とエサを埋め込みます。両手で握って、軽く投げても割れないが、底に着いたら2〜3分で崩れる固さが理想です。これが難しい——握りすぎると硬すぎて崩れず、緩いと空中で割れます。
③同じポイントへ投入し続ける
狙うポイントを決めたら、毎回そこへ団子を投げ込み続けるのが鉄則。回を重ねるごとに団子のヌカが堆積し、その匂いと粒に魚が寄ってきます。あちこち投げると寄せ効果が分散するので、一点集中が結果を呼びます。
④団子割れ後のアタリを取る
団子が割れる瞬間、ウキが少し動いたり、ラインがフッと緩んだりします。そこから本格的な「待ち」の時間に入ります。チヌの食いアタリはウキがスッと消し込まれるか、横に走るか。違和感を感じたら一拍置いて合わせるのがコツです。早合わせはバラシの原因になります。

釣れる時間帯と季節
紀州釣りはマズメ時(朝・夕)が最大のゴールデンタイムです。特に潮が動き始めた直後、ヌカの煙幕が広がるタイミングでアタリが集中します。日中でも釣れますが、潮止まりは食いが落ちるので休憩タイムにしましょう。
季節は通年可能ですが、特に4〜6月の春の乗っ込みシーズンと、9〜11月の秋が好シーズン。真冬の紀州釣りはアミエビ多めの団子で底ベタ狙いに切り替える、というふうに季節で工夫が必要です。
安全面——長竿と団子投げの注意点
紀州釣りで気をつけたいのは、4〜5mの長竿を扱うことと、団子を勢いよく投げる動作です。後ろの電線や歩行者、隣の釣り人との距離を必ず確認してから振りかぶってください。ミケ丸は一度、隣の釣り人の方向に団子を飛ばしてしまったことがあります。幸い当たらずに済みましたが、団子は意外な重さがあって、当たれば大ケガになりかねません。
もう一つ、繰り返し団子を投げる動作は腰と肩に負担がかかります。長時間続けるなら、軸を回す投げ方を意識して、腕だけで投げないのが大事です。一日100〜200回投げるとなれば、フォームの良し悪しが疲労に直結します。釣行前後に肩と腰を軽くストレッチする習慣をつけましょう。
もちろんライフジャケットの着用も必須です。長竿は意外と重く、踏ん張ったときに足を滑らせるリスクが上がります。安全対策の詳細はファミリー釣り安全装備リストも参考にしてください。
まとめ——紀州釣りはチヌ釣りの「粘りの世界」
紀州釣りは、団子を握って投げ続け、ヌカの匂いで魚を呼び込む粘りの釣りです。一発勝負のかぶせ釣りとは違い、徐々にポイントを育てていく感覚は、釣りというよりも「畑を作る」ような奥深さがあります。最初の一匹が出るまで時間がかかることも珍しくありませんが、寄せの感覚を覚えると一日に数枚出る日も生まれます。
瀬戸内では和歌山ほど紀州釣り師は多くありませんが、堤防によっては地元の達人がポツポツと粘っています。声をかけてみると、団子の配合を惜しみなく教えてくれる人もいます。地域に根づいた釣りの輪に入っていく楽しさも、この釣法の魅力のひとつです。
次回は「紀州釣りタックル編」で、入門者がそろえやすい竿・リール・ウキの選び方を解説します。記事公開までしばらくお待ちください。それまではぜひ、ご近所の釣具店で団子の袋を眺めてみてください。それだけで、ちょっと釣り師気分が味わえますよ。
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